食事に含まれるエネルギー量(カロリー)を計算してみよう。(修正Atwater係数とは)

人間と動物で食事の消化率が異なる。

人間は食べ物を、タンパク質を92%、脂肪を95%、炭水化物を97%程度消化できるのに対し、犬や猫は、タンパク質を80%、脂肪を90%、炭水化物を85%程度しか消化できないとされています。そのため、食べ物に含まれる代謝エネルギーも人と犬では異なり、人では、タンパク質4.0kcal/g、脂質9.0kcal/g、炭水化物4.0kcal/g(これらをAtwater係数という)と言われていますが、動物では、タンパク質3.5kcal/g、脂質8.5kcal/g、脂質3.5kcal/g(これらを修正Atwater係数という)と1グラム当たりに得られるエネルギーが少ないです。そのため人の食べ物や人用に計算された食材のカロリーなどをそのまま利用すると実は、摂取カロリーが足らなく体重が痩せてしまうことがあります。特にペットフードのパッケージの裏に記載されているカロリーは、修正Atwater係数を算出したカロリーであることが多いため、ペットフードから手作り食に移行する際は注意が必要です。

栄養素 人(kcal/g) 犬・猫(kcal/g)
タンパク質4.03.5
脂質9.08.5
炭水化物4.03.5

カロリーの計算をしてみよう。

エネルギーを含む食材にどれだけ栄養素が含まれているかは、文部科学省が公表している日本食品標準成分表に記載されています。インターネット上でも無料で見ることができます。アメリカにお住まいの方は、
United States Department of Agriculture (USDA)の公表している食品データを利用すると現地の食材で計算ができます。
食品成分データベース: https://fooddb.mext.go.jp/
USDA Food Data Central: https://fdc.nal.usda.gov/

例)ゆでたササミの場合(肉類/にわとり/【若鶏肉】/ささ身/ゆで)
データベースには、100g当たりタンパク質29.6g、脂質1.0g、炭水化物0g カロリー134kcalと記載されています(データベースは高頻度に更新されている為、ここでに記載した数値と若干の誤差がある場合があります)。
これを動物の代謝エネルギーに換算すると、タンパク質29.6×3.5=103.6 脂質1×8.5=8.5 炭水化物0×3.5=0 合計で103.6+8.5+0=112.1kcalになります。人間と動物の換算では約22kcalもの違いが出てきます。

ササミ100gに含まれる栄養素犬・猫
タンパク質29.6g29.6×4=117.629.6×3.5=103.6
脂質1g1.0×9=91.0×8.5=8.5
炭水化物0g0×4=00×3.5=0
合計(データベースでは134kcal)126.6kcal112.1kcal

この表で注目していただきたいのは、データベースに記載されているカロリーと、私が上記で記載した人のAtwater係数で計算したカロリーとが異なることです。

あくまでもカロリー計算は目安です。

食材ごとに含まれる栄養素や構造が異なる為、本来であれば食材ごとに吸収率は異なるはずです。しかしAtwater係数はその部分を一切無視し、含まれるタンパク質、脂質、炭水化物の量のみで計算をしています。

食品成分データベース(食品標準成分表)はAtwater係数だけでなく、食材ごとに測定調査を行い、エネルギー換算係数を設定しているものもあります。そのため、データベースとAtwater係数で計算した値とでは数値にズレが出ることがあります( 食品成分データベースのエネルギー換算係数:https://fooddb.mext.go.jp/nutman/nutman_02.html#tb05 )。

当然ですが、動物たちにも食材による吸収率の差はあるはずです。しかし残念ながら動物たちには修正Atwater以外にそういったデータが存在しないため、これがそのまま使われています。この修正Atwater係数は、そもそも食材の異なる海外で、その当時の食材(いわゆる飼料)で算出された数値であるため、日本で人間の食品で作った手作り食の真の代謝カロリーと一致するかと言われると疑問は残ります(しかし現状修正Atwaterしかないので使わざる負えません)。
大切なことは、どのようなカロリー計算であったとしても、一定のカロリーの計算方法に統一し、体重を見ながら量を調整することです。
DC one dishでは、手作り食を初めて行う子など、現状ドライフードがほとんどの子の場合は、修正Atwater係数を用い、現状すでに手作り食の子の場合は、データベースのカロリーを用いることが多いです。体重の推移や、もっている病気を考えて獣医師としてその子その子にベターだと考えられるエネルギーの計算方法でレシピをご提案させて頂いております。

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