総合栄養食とは何か。

総合栄養食の定義

総合栄養食とは、毎日の主要な食事として給与することを目的とし、該当ペットフードおよび水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的バランスの取れたものであって、ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則に定める栄養成分等に関する運用基準を常に満たすものをいう。

ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則 解説書
ペットフード公正取引協議会

簡単に要約すると、水と総合栄養食のフードだけで健康に過ごすことができるものということです。
この総合栄養食の定義をしたペットフード公正取引協議会は、景品表示法に基づいてペットフードの表示と景品類の提供に関する規則を作り自主的な運営を目的として活動する任意団体です。日本国内で販売されるペットフードの90%以上は、会員社でカバーされているとのことです。
ペットフード公正取引協議会:https://pffta.org/index.html

総合栄養食を名乗るためには、二つの方法がある。

①分析による証明。

犬で37項目、猫で42項目の栄養素を分析し、数値化することで総合栄養食の基準に適合してるかを検査することができます。この基準は1997年のAAFCOデータに基づき決定されています。(2019年現在AAFCOの最新の基準は2016年版ですが、日本では当分採用されないとのことです。)分析方法は各栄養素ごとに決まりがあり、液体クロマトグラフ法や原子吸光光度法など飼料分析基準に沿って決定されていますが、他にAOAC法による分析も認められています。

AOAC…Association of Official Agricultural Chemists Internationalの略 本部はワシントンDCにあり、研究者たちが分析方法を検証し合う場。ここで有効とされた検証方法が、アメリカ含め多くの国の公定方法として採用されています。
AOAC:https://www.aoac.org/

➁給与試験による証明

各ライフステージ(成長段階)の犬または猫を必要な頭数集めて、必要な期間その食事と水のみの給餌を行います。期間中はフードの摂取量(毎日)、個体ごとの体重(試験開始時、毎週、試験終了後)、獣医師による身体検査(試験開始時、試験終了後)、血液検査(試験終了時:ヘモグロビン、ヘマトクリット値、血清アルカリフォスファターゼ、血清アルブミン、猫の場合はこれに追加して血液中タウリン)を調べなくてはなりません。
上記の測定項目が基準値内である場合、総合栄養食と言えますが、検査期間やコストの問題があるため、これらの検査が行われることは少なく、世の中の市販フードの多くが分析方法で総合栄養食を名乗っているといっても過言ではありません。

日本で栄養分析を行う会社は数社のみで、費用は25万円前後

すべての栄養素を測定するための費用は25万円ほどかかります。そのため、検査機関をもたない中小のフード会社は一度測定したきり、その後全く検査をしていないということもあります。大手のフードメーカーでさえ、毎ロットごとの検査は、必要最低限と言われており、実際に世の中に出回る製品が栄養基準がその都度クリアしているかの証明は非常に難しいのが現状です。

ペットフード公正取引協議会の決めた規則の一つで、あくまで自主基準です。 総合栄養食を名乗るかどうかは各社の判断にゆだねられています。

あくまでも総合栄養食の基準は会員のためのものであり、法的な拘束力はありません。外部の検査機関などによって栄養組成が保証されているものではなく、検査の頻度も規定されていません。検査結果の開示義務はないため、大手を含めほとんどのメーカーはすべての情報を開示していません。そのため、悪く言ってしまえば、検査しているかどうかなど外部の人間にはわかないため、誰でもどんな製品でも表向きは総合栄養食と名乗ることができてしまいます。非会員であれば、規則を守る必要もありません(会員に対しては、違反に対しての調査や違約金などがあるようです)。

消費者の疑問に、メーカーはどこまで真摯に回答できるか。

WSAVA(世界小動物獣医師会)は、Global Nutrition Guidline(世界評価栄養ガイドライン)を提唱しており、「 質問や懸念があればペットフードメーカーに問い合わせます。必要に応じて以下の質問をしてください。 」と以下の質問を提案しています。

  • 御社には獣医栄養学者または同等のスタッフがいますか?もしいれば、相談や質問をすることはできますか?
  • 御社のペットフードのレシピの作成は誰が行っていますか?その人物はどんな資格を持っていますか?
  • 御社のペットフードのうち AAFCO の給餌試験や栄養分析試験で検査された商品はありますか?
  • 御社の商品の均一性と品質保証のために具体的にはどのような品質管理を行っていますか?
  • 御社のペットフードはどこで生産・加工されていますか?工場を訪ねることはできますか?
  • 御社の特定のドッグフードおよびキャットフードについて、消化率を含む総合的な栄養分析値を提供してもらえますか?
  • 御社のペットフードの1缶または1カップごとのカロリー値はいく らですか?
  • これまでにどのような研究が行われていますか?その結果は論文審査のある専門誌に公表されていますか?
    WSAVA:https://www.wsava.org/

しかし、これら全ての質問に納得のいく回答を出すことができるフードメーカーは極めて少ないでしょう。

実際に基準を満たしているの?なぜ、獣医師は大手のメーカーを薦めるの?

以下のような論文があります。(わかりやすいように意訳しております。正しい内容を知りたい方はぜひ本文をご覧ください。)

Many Canadian dog and cat foods fail to comply with the guaranteed analyses reported on packages (2018) https://europepmc.org/article/PMC/6190176
カナダで流通するドックフード (16製品)キャットフード(11製品)の一部の栄養素を調べた結果AFFCOに適合したのは25/27。パッケージに記載のある保証分析値(GA)の要件を満たしたのは9製品だった。

Mineral analysis of complete dog and cat foods in the UK and compliance with European guidelines(2017) https://www.nature.com/articles/s41598-017-17159-7
イギリスで流通する犬と猫のウエットフード(97製品)ドライフード(80製品)のミネラルを分析した結果、ヨーロッパのガイドライン(FEDIAF)に適合したのは、ウエットフード92%、ドライフード61%だった。

FEDIAF…欧州ペットフード工業会連合。ヨーロッパ諸国では、ペットフードの基準は、AAFCOではなくFEDIAFの提唱している栄養素の基準を適用しています。http://www.fediaf.org/

全てのペットフードが基準を満たしているわけではなく、AAFCOやFEDIAFの基準に沿って作っているという趣旨の記載があっても一概にそうとは言い切れない現状があります。日本で成分分析検査は検査費用が高額であり、コストの問題から上記のような論文は見当たりませんが、おそらく日本国内も似たような現状があると考えられます。

信頼のできるメーカーのフードを与えるべき。

かかりつけ動物病院の先生にお勧めのフードを聞くと、総合栄養食を選びましょうという回答や、大手メーカーをお勧めされることが多いかと思います。私たちDC one dishも飼い主様の気にしていることなどをお伺いしてメーカーに問い合わせをし、収集できた情報に基づいてご提案させていただくことはありますが、あくまでも開示された情報を信じてお話することしかできません。前述の通りペットフードの現状は表記とは異なる場合があります。よって、情報提供に真摯に応じてくれるメーカーや自社で研究施設を持ち、栄養組成の微調整をしている療法食を作っているメーカー、つまり大手メーカーを勧めることに必然的になってしまいます。

表記に頼るだけでは実情の把握が難しいため、獣医師も飼い主も慎重にペットフードを選ばなくてはなりません。各社ペットフード会社が、真摯に対応してくださることを切に願います。

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