手作り食でニンニクを与えることの危険性

ニンニクの毒性

ニンニクにはアリインという物質が含まれており、脱水、粉砕、切断などの加工過程の際にアリナーゼと反応しアリシンになります。アリシンはニンニクの独特なニオイの成分として有名ですが、アリシンは反応性が高く、他の物質と反応したり、アリシン自体が他の物質に変換してしまうことにより、最終的に様々な有機硫黄化合物へと変化します(例:ジアリルジスルフィド (DADS) 、ジアリルトリスルフィド (DATS) )。
この有機硫黄化合物の酸化力が、グルタチオンの還元力を上回ることにより、ヘモグロビンをメトヘモグロビンへと変化させたり、赤血球膜に障害(ハインツ小体の形成など)を与え、溶血性貧血を引き起こしていると言われています。

ここまでわかっていてナゼ「ニンニクは体重当たり何グラムまでなら大丈夫」といったように中毒量が明確に記載されないのかというと、「有機硫黄化合物」は複数の物質の総称であり、これらが経時的に連鎖反応を起こし変化していくことや、ニンニクの種類、加工形態により有機硫黄化合物の量が変化するため、定量が困難だからです。これは中毒を引き起こすことで有名なタマネギにも同じことが言えます。

また貧血以外にも、消化器粘膜に発赤やびらんを起こす可能性があり、嘔吐、下痢などの消化器症状を引き起こすことがあります。

毒性量に関する研究

体重1kgあたりニンニク5g(およそ1/3~半カケラ)に相当する抽出物を毎日1回、計7日間与えると、血液に異常を引き起こす(投与1日目より赤血球数は減り、30日後も完全に回復していない)。
Hematologic changes associated with the appearance of eccentrocytes after intragastric administration of garlic extract to dogs

ニンニクを12週間90mg/kg与えても血液検査上有意差はない。
Safety and efficacy of aged garlic extract in dogs: upregulation of the nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2) signaling pathway and Nrf2-regulated phase II antioxidant enzymes

100mg/kgで以前投与した際に問題が見られなかったため、この投与量で実験をしたとの記載はあるが、明確なソースの記載なし。
A comparison between metformin and garlic on alloxan-induced diabetic dogs

こちらのページではニンニクについての文献をうまくまとめています。リファレンスが検索できないですが、750mg/kgまでなら問題がなかったという文献もあるよう。
Garlic (oil) in dog food(2020)

おそらく最大無毒性量は90mg-5g/kgの間にあると考えられますが、上述の通り、ニンニクの種類や加工方法による有機硫黄化合物の差や、個体差(感受性の差)もあります。一概にどれくらいが体に悪いと言うことは出来ませんが、仮に90mgまでが安全であるならば、みじん切りにしたニンニクの”1粒”がギリギリ安全かどうかというサイズになります。

さらに人間のADI(一日許容摂取量)の設定方法を仮に採用して考えると、そこから個体差10で割り、毎日食べても安全な量を算出するため、より安全に摂取できる量は減ります。

ニンニクの体に良い効果は?虫よけ効果があるって本当?

犬の経口摂取において、ノミなどの外部寄生虫を避ける効果や口臭予防を挙げる人もいますが、エビデンスを明示するものはありませんでした。そのため、現時点において少量で中毒量に達成する可能性の高いニンニクをあえて使用する必要は一切ないと言えます(ニンニクを飼育環境に撒くと、虫よけに多少効果があるようですが…)。

ドライフードにニンニクが入っているものがあるけど大丈夫?

メーカーによってはドライフードにニンニクを入れていることがあります。しかし、それは非常に極めて少ない量であり、含有量が開示されているフードを見ると全体の0.2%や0.01%のお話です。これができるのは、何百キロというフードを一度に大量に作れるメーカーだからこそできる技なのです。

結論:手作り食でニンニクを与えるという危険なことをしてはいけない

ご家庭で調理する手作り食において、ニンニクを極めて微量添加するということは、基本的に困難です。また、ニンニクを添加することによる有益な効果は証明されておらず、あえてニンニクを添加するというリスクを冒してまで与える必要のない食材です。

「動物たちの食で最も大切なことは、安全であり栄養価が整っているということです。」

インターネットや獣医師監修の書籍でさえもニンニクを添加するような手作り食のレシピがありますが、書籍になっているからと言って必ずしもその情報が正しいとは限りません。情報に騙されずに手作り食を実践していただき、我が子に安心、安全な手作り食を実践したいただければと思います。

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