市販ペットフードの表記について
実はパッケージと全然一致しない栄養組成
市販のペットフードを比較する際に、パッケージやWebページに記載されている栄養組成を見比べることがあります。当然ですが、食材の収穫時期や地域により、多少の栄養の誤差は出てきてしまうため、記載されている数値ちょうどぴったりの栄養素量がペットフードに含まれているわけではありません。今回はそんなお話です(総合栄養食とは何かのページでも類似する内容を記載しています)。
Many Canadian dog and cat foods fail to comply with the guaranteed analyses reported on packages (2018)<この文献を読みたい方はこちら>
【内容】 カナダのドックフード(16製品)キャットフード(11製品)の一部の栄養素を調べた結果AAFCOに適合したのは25/27。パッケージに記載のある保証分析値(GA)の要件を満たしたのはたった9製品。
Mineral analysis of complete dog and cat foods in the UK and compliance with European guidelines (2017)<この文献を読みたい方はこちら>
【内容】 FEDIAFのガイドラインを遵守してドライフード(80製品)、ウエットフード(97製品)が作られているかを確認するためにミネラルの分析をした結果、ドライ61%,ウエット92%が適合していないことが判明(イギリス)。
上記の文献のように少なからず、記載と大きく異なるペットフードが世界には流通しているということがわかります。これが動物病院の獣医師様が、大手の会社のペットフードを薦める一つの理由です。大手だから安心というわけではありませんが、自身の研究所でロットごとにチェックを入れたりできるのがやはり強みにはなります。
日本では分析値とどこまでズレていても問題ないの?
表記しなければいけない成分は?
ペットフード公正取引協議会では、以下のように成分表示の記載を取り決めています。
・(粗)たんぱく質・・・%以上
・(粗)脂質・・・%以上
・粗繊維・・・%以下
・(粗)灰分・・・%以下
・水分・・・%以下
記載しなければならない表記はたったこれだけです。「~%以上」「~%以下」という、正確にはどれくらい入っているかは不明な表記の方法になっています。また代謝エネルギー(カロリー)の記載も任意になっています。
なぜ「以上」「以下」となっているのか
これらの表記は内容成分を把握するためではなく、単位当たりのカロリーを保証するために記載されています。そのため、エネルギー(カロリー)となるタンパク質、脂質は「以上」で表記され、エネルギーにならないものについては、「以下」となっています。
※炭水化物(NFE)は、100-(水分+粗タンパク質+粗脂肪+粗繊維+粗灰分)で計算される。(NFE:可溶性無窒素物 厳密には炭水化物と異なる)
それ以外の表記は任意である。
残念ながら海外の文献のように日本で近年第三者機関がペットフードの分析をした例はなさそうです。
人の食品の場合、食品表示法というものがあり、表記の仕方に明確な定義がありますが、残念ながらペットフードは食品ではないため、完全に製造会社の善意に任されています。そのため、信頼できそうなフード会社の製造するペットフードを利用するしかありません。
食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン
おまけ:ドックフードに記載されている内容量と実際の量の差はどこまで許容されるの?
法的な決まりはありませんが、一般的には全国計量行政会議ガイドラインに従い、誤差範囲を決定していることが多いです。ただし、記載している量よりも実際の量が少ないとトラブルになりかねないので、多少多く入っていることが多いと思われます。
全国計量行政会議によるガイドライン
※特定商品以外の商品
表示量(単位はグラムまたはミリリットル) | 過量の誤差 |
5以上 50以下 | 5グラム(ミリリットル) |
50を超え 300以下 | 10パーセント |
300を超え 1000以下 | 30グラム(ミリリットル) |
1000を超えるとき | 3パーセント |
表示量(単位はグラムまたはミリリットル) | 不足量の誤差 |
5以上 50以下 | 8パーセント |
50を超え 100以下 | 4グラム(ミリリットル) |
100を超え 500以下 | 4パーセント |
500を超え 1000以下 | 20グラム(ミリリットル) |
1000を超えるとき | 2パーセント |
より詳しく知りたい方はこちら
経済産業省:計量法における商品量目制度の概要