タンパク漏出性腸症の食事管理

炎症性腸疾患(IBD)とタンパク漏出性腸症(PLE)は一連の病態でない可能性

犬では、PLEに関連した死亡率は54.2%(肺血栓塞栓症PTEを含む)に対し、IBDによる死亡率は20%未満と言われており、明らかに死亡率が異なっています。また、PLEの約50%はリンパ管拡張症(PLI)に関連し、約66%はリンパ球プラズマ細胞性腸炎(LPI)に関連していると言われています。リンパ管炎と陰窩疾患の関連は、それぞれ10%未満、その他のIBD(肉芽腫性、好酸球性)がPLEの原因になっていることは、稀のようです。猫では、IBDにPLEが関係していることが珍しいと言われています。

人のPLEでは、食事管理が基本となっているのに対し、犬では時にリンパ管拡張症、リンパ管炎、陰窩疾患を含むPLEの原因に対し、免疫抑制剤を使用することがあります。ただし、現在のところ、自己免疫や免疫介在性のメカニズムに対しての科学的なエビデンスはありません。犬におけるコルチコステロイドの治療は、ステロイド治療の副作用である筋肉のタンパク質の異化、血栓症、高脂血症(リンパ管を拡張する可能性がある)は、PLEの治療にはマイナスに働くかもしれないことを考慮しなくてはなりません。また近年では、免疫抑制剤を使用した群と食事療法のみで使用した群では、食事療法のみの群のほうが成績が良いと言われることもあり、免疫抑制治療の必要性を考えなければなりません。

PLEの犬の場合血液検査上変化する可能性がある数値

  • 低アルブミン☆
  • 低グロブリン
  • 低コバラミン☆
  • 低マグネシウム
  • 葉酸欠乏
  • リンパ球減少症
  • 低コレステロール
  • BUNの変化(低下、上昇の報告がある)
  • 低カルシウム
  • 低25(OH) D☆
  • コルチゾール濃度
    ☆:予後に関わる可能性あり

タンパク漏出性腸症の食事

人ではMCTを含む低脂肪食は、PLEの管理のベースとなり、最も効果的で副作用も少ないため多く使用される方法です。MCTを含む高タンパク質低脂肪食は臨床症状を改善させるだけでなく、死亡率を低下させます。
ただし、動物たちにおいては、MCTの食事への添加は確固たるエビデンスがあるものではないため、現時点においては個々の状態に合わせて使用するべきでしょう。少なくとも低脂肪、低アレルゲンの食事が推奨されます。

脂肪制限のメリット

  • 腸リンパ管の乳びによる充血を防ぎ、乳び管の破裂を防ぐ。

低アレルゲンのメリット

  • 食物アレルギーなどの食事に起因する問題が根底にある場合は有効。

MCTのメリット

  • リンパ管を迂回すること(門脈循環に直接吸収される)。
  • 吸収は受動的拡散によって起こる。
  • パッケージング、修飾をこれ以上受けることがない。
  • 吸収にあたりコレシストキニンの分泌や胆汁とリパーゼの作用を多くは利用しない。
  • ミトコンドリアに輸送される際に、カルニチンアシルトランスフェラーゼに依存しないため、タンパク欠乏状態でも利用が可能。

推奨される栄養組成

エネルギー密度  >3.5kcal/g
炭水化物55-60%
脂質10-15% さらに脂質を下げた超低脂肪食を与える場合あり
タンパク質25-30% (猫35%以上)
粗繊維(不溶性繊維)5%以下程度

ジャガイモと鶏むね肉だけで食事管理を行うと低カルシウム血症になった、などの文献もありますが、そのような栄養組成の整っていない食事管理では当然の結果です。 短期的にアレルゲンを少なくするためにそのような食事であったとしても、長期管理できる栄養組成へ徐々に様子を見ながら変更する必要があります。健康な子でも必要な栄養素である必須脂肪酸(長鎖脂肪酸)や脂溶性ビタミン(A.D.E.K)なども必須です。時には血液検査の状態などを加味し、非経口的に栄養素を与える必要もあります。

まとめ

  • 食欲が低下している個体が多い為、何よりも嗜好性を維持しなくてはならない。
  • 中鎖脂肪酸の配合量は、脂質全体の最大30%のカロリー程度だったり、経験的にカロリー要求量の25~30%と言われる。
  • 重度の低アルブミン(<1.5g/dl)である場合、効果のある食事に変更した3日後くらいには反応が見られる。さらに反応しない場合、タンパク質を増加させ、5-7日たってもアルブミンの増加がみられない時は、タンパク源の変更や、より消化吸収の良いものへの変更を行うなどの対処をとる。
  • 食事の回数は、浸透圧維持のため1日当たり6-8回が理想。まずはRER分の食事を与える(体重低下が認められる場合、徐々に食事量を増加させる)。
  • 低アルブミンが解消されても低グロブリンが解消されない。経口初乳粉末に応答することがある。
  • 人の経口アミノ酸製剤を使用することもできるが、栄養バランスの調整が必要。
  • 手作り食を実践していないのに、食事に反応しないと勝手に決めつけない。

文献
Comparative pathophysiology and management of protein‐losing enteropathy(2019)
嘔吐・下痢と食物との関連性について(2010)
The clinical efficacy of dietary fat restriction in treatment of dogs with intestinal lymphangiectasia.(2014)
Hypovitaminosis D is associated with negative outcome in dogs with protein losing enteropathy: a retrospective study of 43 cases(2017)
・小動物の臨床栄養学 第5版
食事への中鎖脂肪酸添加が健常猫の代謝に与える影響について(2016)

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