血圧は人と異なりナトリウム非依存性!?

減塩の必要ってあるの?

人ではWHOのガイドラインにおいては成人一日当たり食塩相当量として5g/日未満、日本腎臓病学会編の「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018 」や世界の高血圧治療ガイドラインでも減塩目標は食塩6g/日未満とされており、食塩(ナトリウム)が血圧に関与していることが知られています。

一方、動物たちはというと、減塩(ナトリウム制限)の効果は現時点においては疑問視されています。

ACVIMコンセンサスにおいて、以下のようなエビデンスにより、ナトリウム制限による血圧の低下は一般的ではないと示唆しています。
・鉱質コルチコイド( desoxycorticosterone  )投与と高ナトリウム食または、片側腎摘出をした犬において血圧が上昇。
・腎機能が低下しているネコにおいて高ナトリウム食は高血圧を促進しない。
・犬の食塩誘発高血圧は、腎摘出または鉱質コルチコイド投与実験モデルに限定されているよう。
・犬と猫の既存の全身性高血圧において高ナトリウム摂取による血圧への影響は、評価されていない。
ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats(2018)

正常犬・猫の高 ナトリウム摂取における 血圧および飲水量の変動
犬および猫における水およびナトリウムの調節機構 - 血圧管理の面から -

各社療法食は人にならい、心臓療法食や腎臓療法食でナトリウム制限をしていることが多いですが、現時点においてナトリウムが血圧に対して有効であるエビデンスは乏しいため、過剰摂取や、極端な制限を避けるのみで良さそうです(※過剰な制限もRAA系に影響を与える可能性があり良くないと言われています)。

高齢者では、味付けが薄くなることによる食欲の低下が、たんぱく質を始め多くの栄養素の摂取の低下を招き、フレイル等を招く可能性もあることから、状態、状況に合わせた塩分の管理が必要だと言われています。
動物たちの場合はナトリウムの制限により嗜好性が落ちるというエビデンスは確認できませんが、厳格な塩分制限により食材の制限がかかり、嗜好性が落ちてしまうくらいなら、しっかりと食べてくれるような食事をデザインして与えたほうがよいのかもしれませんね。

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